Python 参照渡し回避の基礎 練習問題で理解

参照渡しでは、関数に引数を渡すときに、その値の参照を渡します。ただし、参照渡しを使用すると、関数内で引数の値を変更すると、呼び出し元の変数の値も変更されるため、注意が必要です。意図しない変更を発生させないように、関数内で引数の値を変更する際には、十分に注意する必要があります。参照渡しの特性を理解して、問題を回避する方法を解説します。

参照渡しとは?Pythonにおける仕組みと特徴

回避の解説の前に参照渡しの仕組みと特徴について少しお話します。
参照を渡しとは、Python において引数や変数を渡す仕組みの一つです。この仕組みでは、変数やオブジェクトのメモリ上のアドレス(参照)が渡されます。
リストや辞書などのオブジェクトを関数に渡すときによく使用されます。これは、リストや辞書などのオブジェクトの値ではなく、メモリ上のアドレスを格納しているため、参照渡しを行うことで、関数内でオブジェクトの値を変更すると、元のオブジェクトの値も変更されます。

参照渡しの特徴

参照渡しの特徴として、関数内で引数の値を変更すると、元の変数にも影響が及ぶ点が挙げられます。これは、参照渡しによって同じオブジェクトを指す個別の変数が作成されるためです。

リストを関数に渡す場合、関数内でリストを変更すると、元のリストも変更されます。これは参照渡しの典型的な例です。

参照渡し

練習問題1.以下のコードを実行した結果を予測してみてください。

def modify_list(some_list):
    some_list.append(4)

my_list = [1, 2, 3]
modify_list(my_list)
print(my_list)

【解説】
引数modify_listで受け取ったリストに要素 4 を追加しています。これは参照渡しにより元のリストにも影響を与えます。

#出力結果
[1, 2, 3, 4]

練習問題2.以下のコードを実行した結果を予測してみてください。

def modify_list(some_list):
    some_list.append(4)
    some_list[1] = 99

my_list = [1, 2, 3]
modify_list(my_list)
print(my_list)

【解説】
この問題では、リストを参照して渡す場合の参照渡しの挙動を確認します。関数modify_listは引数で受け取ったリストに要素 4 を追加し、また、リストの2番目の要素を 99 に変更しています。

ここで重要な点は、関数modify_list内で行われた変更が元のリストにも影響を与えるということです。つまり、関数内でリストを変更すると元のリストも変更されます。

具体的な動きとして、以下のような流れがあります。

  1. 最初に my_listは[1, 2, 3] というリストを参照しています。
  2. modify_list関数にmy_listを渡します。
  3. 関数内でsome_listという仮引数がmy_listを参照しています。
  4. ome_listに対してappend(4)が行われるため、リストは[1, 2, 3, 4]になります。
  5. some_list[1] = 99により、リストの2番目の要素”2”が ”99 ”に変更され、リストは[1, 99, 3, 4] になります。
  6. print(my_list) が実行されると、my_listが参照しているリスト [1, 99, 3, 4] が出力されます。
#出力結果
[1, 99, 3, 4]

したがって、関数内でリストを変更することで、元のリストmy_listも変更されていることが確認できます。

def modify_string(some_string):
    some_string += " world"

my_string = "hello"
modify_string(my_string)
print(my_string)

これがPythonにおける参照渡しの典型的な例です。

参照渡しのメリットとデメリット

参照渡しは、変数を関数に渡す際に、変数の値ではなく、変数を指す参照を渡す方法です。参照渡しには、以下のメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 関数内で変数の値を変更すると、呼び出し元の変数の値も変更されるため、関数と呼び出し元の間でデータの共有が簡単にできます。
  • ポインタよりも安全に使用できます。ポインタは、変数ではなくメモリアドレスを参照するため、不正なメモリにアクセスするなどのエラーが発生する可能性があります。

デメリット

  • 値渡しよりもメモリを消費します。参照渡しでは、変数と関数の間に参照が保存されるため、値渡しよりもメモリを消費します。
  • 関数内で変数の値を変更すると、呼び出し元の変数の値も変更されるため、意図しない変更が発生する可能性があります。

参照渡しは、関数と呼び出し元の間でデータの共有が簡単にできるため、効率的なプログラムを記述するのに役立ちます。ただし、メモリを消費する点や、意図しない変更が発生する可能性がある点に注意する必要があります。

リストや辞書の参照渡しによる問題点と防止策

リストや辞書の参照渡しによる問題点と防止策は、次のとおりです。

  • メモリリークが発生する可能性がある。
    理由:リストや辞書の要素が削除された後も、参照渡しによってメモリが解放されない場合があるため。
    防止策:リストや辞書の要素を削除した後、参照を削除する。
  • 意図しない変更が発生する可能性がある。
    理由:リストや辞書の要素を変更すると、参照渡しによって元の要素も変更されるため。
    防止策:リストや辞書の要素を変更する前に、変更する要素が正しいものかどうかを確認する。
  • パフォーマンスが低下する可能性がある。
    理由:リストや辞書の要素を参照渡しで渡すと、メモリアクセスのオーバーヘッドが発生するため。
    防止策:リストや辞書の要素を参照渡しで渡す必要がなければ、値渡しを使用する。

リストや辞書の参照渡しを使用する際には、上記の問題点に注意する必要があります。

copyモジュールを使った参照渡し回避方法

Pythonのcopyモジュールには、参照渡しを回避するために使用できるいくつかの関数が用意されています。これらの関数は、リスト、辞書、セットなどのオブジェクトをコピーして、参照渡しを回避することができます。

copyモジュールで使用できる主な関数は次のとおりです。

  • copy.copy()
    浅いコピーを作成。
    浅いコピーとは、元のオブジェクトの値をコピーするだけであり、元のオブジェクトが参照しているオブジェクトはコピーしません。
  • copy.deepcopy()
    深いコピーを作成。
    深いコピーとは、元のオブジェクトの値と、元のオブジェクトが参照しているオブジェクトをすべてコピーします。
  • copy.deepcopy_list()
    リストの深いコピーを作成。
  • copy.deepcopy_dict()
    辞書の深いコピーを作成。
  • copy.deepcopy_set()
    セットの深いコピーを作成。

これらの関数を使用すると、参照渡しを回避して、オブジェクトを安全にコピーすることができます。

以下に、copyモジュールを使った参照渡し回避の例を示します。

import copy

list1 = [1, 2, 3]
list2 = list1
list1[0] = 10
list2

#出力結果
[10, 2, 3]

list3 = copy.copy(list1)
list3[0] = 20
list1

#出力結果
[10, 2, 3]

list3

#出力結果
[20, 2, 3]

list4 = copy.deepcopy(list1)
list4[0] = 30
list1

#出力結果
[10, 2, 3]

list4

#出力結果
[30, 2, 3]

上記の例では、list1 と list2 は同じオブジェクトを参照しています。そのため、list1 の値を変更すると、list2 の値も変更されます。一方、list3 と list4 は異なるオブジェクトを参照しています。そのため、list3 の値を変更しても、list4 の値は変更されません。

copy モジュールを使った参照渡し回避は、オブジェクトを安全にコピーするために役立ち、正しくコピーを作成することで、関数内での変更が元のオブジェクトに影響を与えません。

スライスを用いた参照渡し回避のテクニック

リストや辞書の参照渡しによる問題点は、関数内での変更が元のオブジェクトにも反映されてしまうことです。しかし、スライスを置くことで参照渡しを回避し、新たなオブジェクトを作成することができます。スライスとは、リストやタプルなどのオブジェクトの要素を範囲を指定して取得する方法です。

スライスは、元のリストや辞書の一部を取り出して新しいオブジェクトを作成するため、参照渡しによる影響を受けません。このメソッドを利用すれば、関数内での変更が元のオブジェクトに反映されますされる心配はありません。

では、以下はスライスを用いた参照渡し回避の例です。

def modify_list(lst):
    new_list = lst[:]
    new_list.append(4)
    return new_list

my_list = [1, 2, 3]
result = modify_list(my_list)
print(my_list) 
print(result)   

 # 出力結果
[1, 2, 3]
[1, 2, 3, 4]

スライス 練習問題1

例えば、次のコードは、リスト list1 の最初の 3 つの要素を取得しています。

list1 = [1, 2, 3, 4, 5]
list2 = list1[:3]
print(list2)

#出力結果
[1, 2, 3]

list2 は、list1 の最初の 3 つの要素を参照していますが、list1 の要素を変更しても、list2 の要素は変更されません。

これは、list2 は、list1 の要素をコピーして作成しているためです。そのため、list1 の要素を変更しても、list2 の要素は変更されません。

スライスを置くことで、参照渡しによる問題点を回避し、新たなオブジェクトを作成できます。関数内での変更が元のオブジェクトに影響を与えたくない場合には、このテクニックを利用して試してみてください。

Pythonの関数引数における参照渡しとは?

Pythonの関数引数における参照渡しは、関数に渡される引数を、ポインタまたは参照として渡す仕組みであり、関数内での変更が元の引数にも反映されます。

参照渡しは、関数内で引数の値を変更する必要がある場合に使用される効率的な方法ですが、意図しない変更を発生させないように、関数内で引数の値を変更する際には、十分に注意する必要があります。

参照渡し回避のためのキーワード引数の活用

Python では、キーワード引数を用いることで、参照渡しを回避することができます。キーワード引数とは、関数に引数を渡す際に、引数の名前を指定して渡す方法です。キーワード引数は、関数の定義時に引数の名前を指定することで使用することができます。

例えば、次のコードは、関数foo()、キーワード引数 bar を渡しています。

def foo(bar):
  print(bar)

foo(bar="Hello, World!")

このコードを実行すると、次の出力が表示されます。

キーワード引数を用いることで、関数に渡される引数の順序を気にする必要がなくなります。そのため、参照渡しを回避することができます。

例えば、次のコードは、リストlist1を関数foo()に渡しています。

list1 = [1, 2, 3]
foo(list1)

このコードを実行すると、次の出力が表示されます。

list1 は、関数 foo()に参照渡しで渡されています。そのため、関数foo() 内で list1 の要素を変更すると、呼び出し元の list1 の要素も変更されます。

しかし、次のコードでは、キーワード引数を用いて list1 を関数 foo() に渡しています。

list1 = [1, 2, 3]
foo(bar=list1)

この場合、list1 は、関数foo()にコピーして渡されています。そのため、関数foo() 内で list1 の要素を変更しても、呼び出し元の list1 の要素は変更されません。

キーワード引数を活用することで、参照渡しによる問題を回避することができます。関数内での変更が元の引数に影響を与えない場合には、キーワード引数を使って新たなオブジェクトを生成しましょう。

デフォルト引数の落とし穴と参照渡し回避への応用

Python の関数に関して引数を設定する際には、参照渡しによる予期しない挙動に注意が必要です。この問題を回避するためには、一旦引数としてミュータブルなオブジェクトを使用せず、代わりにNoneを設定し、関数内で新しいオブジェクトを作成する方法を応用することが有効です。

何も使っていない引数を設定し、関数内でオブジェクトを作成すれば、新しい参照渡しによる問題を回避できます。

以下は引数の落とし穴と参照渡し回避の応用の例です。

def append_to_list(item, my_list=None):
    if my_list is None:
        my_list = []
    my_list.append(item)
    return my_list

result1 = append_to_list(1)
result2 = append_to_list(2)

print(result1)  # 出力結果は[1]
print(result2)  # 出力結果は[2]

append_to_list()関数は、リストに要素を追加する関数です。第1引数は追加する要素、第2引数はリストです。第2引数が指定されていない場合は、空のリストが作成されます。関数は、リストに要素を追加し、そのリストを返します。

result1とresult2は、それぞれappend_to_list()関数に1と2を渡して呼び出した結果です。print()関数で出力すると、それぞれ[1]と[2]が表示されます。

以下に、append_to_list()関数の詳細な解説をします。

  • def append_to_list(item, my_list=None): 関数の宣言です。関数の名前はappend_to_list、引数はitemとmy_listです。第2引数my_listにはデフォルト値Noneが指定されています。
  • if my_list is None: my_listがNoneかどうかを判定します。
  • my_list = []: my_listがNoneの場合は、空のリスト[]を作成します。
  • my_list.append(item): my_listにitemを追加します。
  • return my_list: my_listを返します。

この関数は、リストに要素を追加する必要がある場合に使用できます。第2引数が指定されていない場合は、空のリストが作成されます

参照渡し回避の基礎と理解のまとめ

Python の参照渡しは、プログラムの動作を理解する上で重要な概念です。参照渡しの基礎から、コピーモジュールを使った回避方法や関数引き数での対策など、効果回避手法を詳しく解説しました。ぜひこれらの知識を実践して、より信頼性の高いPythonプログラムを開発しましょう。

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